勝然 勇也・三浦 拓也・諏訪 勇麻・阿部 令・佐々木 卓博・鈴木 真・遠藤 雄飛・小野 浩明・東 兼規・山田 有理・伊藤 大将・小川原 佳希・今野 優也・佐々木 祐香・門馬 裕里・山内 透也
所属:宮城県石巻工業高等学校
(Tel:0225-22-6338;Fax:0225-22-6339)
(Email address:hirokado◎ishiko.myswan.ne.jp)
概要: エチゼンクラゲの有効利用について、化学的、工業的な手法を使用し、工業的な有効利用方法について、新しい分野を切り拓くものである。
keywords: バイオマテリアル、新素材開発、振動特性
この研究を始めた理由はエチゼンクラゲが現在日本各地で大量発生し、宮城県でも二日で300トンものエチゼンクラゲが大量に水揚げされることがあるからである。そのため、漁業関係の方々に経済的な面を中心に多大な被害を与えている。主にエチゼンクラゲは、漁に使う網に掛かり網を破いたり、魚に傷をつけ商品価値を落すなどの被害をもたらしている。一部が食用として利用される程度であり、ほとんどはそのまま廃棄されている。このように、現在までのところエチゼンクラゲの決定的な有効利用の方法が確立されていない。
これらの事を踏まえ、工業的に有効利用できないかと考え、様々な実験を行い実生活で使えるような物質を作り上げようと考え、研究した。
調べてみると、エチゼンクラゲには弾力性のあるタンパク質が含有されていることが分かった。
この物質をいかにして利用するかを検討したところ、スピーカーに応用できると考え、研究した。
一般的に、つくられているスピーカーの振動板は、エネルギー効率と高い周波数の音を出すために非常に高い弾性率を持つプラスチックを使用している。しかしながら、逆に、それ以外の音質については充分に性能を発揮しにくいという欠点をもっている。この欠点をおぎなう為に、硬いプラスチックと柔軟性を持つクラゲタンパク及びその化合物を複合化する事により、スピーカーの振動板の性能を向上させる事が出来るのではないかと考えた。エチゼンクラゲの有効利用について今まで水産又は生物の分野で考えられ、工業材料として検討されてこなかった。この研究で、新しい分野を切り拓くつもりである。
最初に下処理として、
① クラゲの塩分を抜くため、水で洗浄。
② EDTA(エチレンジアミン四酢酸)と有機溶媒を加え、10時間撹拌。
③ 吸引ろ過し、水分をエタノールで置換
④ 80℃で10時間乾燥。
これを、エチゼンクラゲタンパクと名づけて、工業用の素材として有用なものを作るために、様々な化学反応を行い、新しい化合物を合成し、検討した。今日はそのうちの三つを紹介する。一つ目は、エチゼンクラゲタンパク中のアミノ残基に着目し、酸又は酸無水物と反応させ、アセチル化反応を行った。
具体的には、
① 極性の高い溶媒であるDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)中において酸または酸無水物をエチゼンクラゲタンパクに加えた。
② 90℃で90分加熱及び撹拌した。
③ 加熱及び撹拌したものを吸引ろ過した。その後、含まれている水をメタノールと置換した。
④ 80℃で10時間乾燥させた。

図1 アセチル化エチゼンクラゲタンパクの化学構造

図2 ポリスチレンエチゼンクラゲタンパクのX線元素分析

図3 FT-IRによる分析結果

図4 サイン波の出力分析
エチゼンクラゲタンパク中のアミノ残基に着目し、酸又は酸無水物と反応させ、アセチル化反応を行った結果、酢酸エチゼンクラゲタンパクは、黄色のプラスチック状粉末として得られた。(図1)
2、エチゼンクラゲタンパク分子に一般のプラスチックと親和性の高い分子構造を入れて複合効果を高めるために、様々な条件でグラフト重合させた。得られたポリスチレンエチゼンクラゲタンパク分子の主鎖に結合したポリスチレン分子鎖の数に大きな差はなく(図2)、ほぼ同じものと考えられる。
更に、エチゼンクラゲタンパクに生分解性を維持しつつ、その成形性を向上させるために、メイラード反応させた。それをFT-IRで分析(図3)したところ、アルギン酸オリゴマーエチゼンクラゲタンパクの分子鎖に、アルギン酸オリゴマーが反応している事が分かった。これらからアルギン酸オリゴマーとエチゼンクラゲタンパクはメイラード反応したと考えた。
これら、エチゼンクラゲタンパクの様々な化合物をスピーカーに加工して試験した結果、クラゲタンパク化合物が全て、エポキシ樹脂のみで作製した振動板よりもノイズが少ない上に、それぞれが特徴的な特性(図4)を示した。具体的には、周波数帯によって出力の大きさに特徴があった。これらのことから三角波の特性については、クラゲタンパク及びクラゲタンパク化合物によって、より性能の良い、また特徴のあるスピーカー振動板を製作することが出来ることがわかった。
エチゼンクラゲタンパク中のアミノ残基に着目し、酸又は酸無水物と反応させ、アセチル化反応を行い、生成した化合物の性質を調べるためにIR(赤外分光分析)測定、Ⅹ線元素分析、SEM(電子顕微鏡)等の分析を行った。
各機器の測定結果により、それぞれの酸及び酸無水物がエチゼンクラゲタンパクと反応し、アセチル化されたことが確認された。
しかし、工業用の素材として有用なものにするためには、より多くのプラスチックと複合化しやすい材料とする必要があると考えた。
エチゼンクラゲタンパク分子に一般のプラスチックと親和性の高い分子構造を入れてやるために、グラフト重合させた結果、重合開始剤の量がある割合において最高の収量を得ることが出来たが、それより多くても逆に得られる生成物の量は減少する傾向にあることがわかった。
ある程度以上重合開始剤を加えていくと、重合開始剤によってエチゼンクラゲタンパクの分子鎖が切断されていくか、分解していくのではないかと推測した。
エチゼンクラゲタンパクに生分解性を維持しつつ、その成形性を向上させるために、メイラード反応させた結果、反応温度を高くするにつれて溶液の色が褐色に近づいていった。
メイラード反応の特徴である生成物が褐色であるという特徴を満たしているので、メイラード反応が進行したと推測した。
その利用方法として、エチゼンクラゲタンパクをスピーカーへ応用させた結果、エポキシ樹脂との複合化は素材同士がピッタリと良好に接着しており、成形性、加工性の点で優れている事がわかった。
OとCの比較的強い極性のある結合がみられ、これらが極性のあるプラスチックとの接着性及び複合化性能が高い理由ではないかと推測した。
(1)日本の漁場においてエチゼンクラゲ類は多くの被害をもたらしているので有効利用の価値も高いと考えられる。
(3)クラゲタンパクと酸及び酸無水物との反応による有効利用においては、酢酸、無水酢酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水フタル酸等を反応させて新しい素材を創り出すことが出来た。
(4)クラゲタンパクの分子に、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリp-スチレンスルホン酸ナトリウムなどの一般のプラスチックと親和性の高い分子構造を、グラフト重合を行って導入することが出来た。
(5)クラゲタンパクにメイラード反応によって、D-グルコース及びアルギン酸オリゴマー(D-マンヌロン酸、L-グルロン酸の混合物)を反応させ、生分解性を低下させない様な新しい素材を創り出すことが出来た。
(6)エチゼンクラゲタンパクとその化合物の工業材料への有効利用の検討を行った。一般につくられているスピーカーの振動板は、エネルギー効率と高い周波数の音を出すために非常に高い弾性率を持つプラスチックを使用している。しかしながら、逆に、それ以外の音質については充分に性能を発揮できないという欠点をもつ。この欠点をおぎなう為に、硬いプラスチックと柔軟性を持つクラゲタンパク化合物を複合化する事により、スピーカーの振動板の性能を向上させる事が出来た。また、様々な特性を出せることがわかった。
[1]グラフト共重合とその応用
[2]有機溶媒可溶グラフト共重合体
[3]海洋生物資源の有効利用
[4]各種特許広報
[5]新水産学全集 水産利用化学
[6]非水溶媒中におけるタンパク質の性質
[7]Wikipediaフリー百科事典
| 領域 | 領域代表 | 領域アドバイザー |
|---|---|---|
| 領域1 【物理から生物】 |
沢田康次 (東北工業大学学長) |
武田曉(東京大名誉教授、東北大名誉教授) |
| 領域2 【物理から環境】 |
今村文彦 (東北大学大学院工学研究科 災害制御研究センター) |
湯本良次(東北学院榴ヶ岡高校 副校長) |
| 領域3 【生物から環境】 |
本川達雄 (東京工業大学 生命理工学部) |
菅原研(東北学院大学 准教授)、千葉聡(東北大学大学院生命科学研究科 准教授) |
| 領域1 | アリの行列とバスのダンゴ運転 | ○友枝明保1,2、西成活裕2,3 | 1.明治大学先端数理科学インスティテュート、2.東京大学工学系研究科、3.独立行政法人科学技術振興機構さきがけ |
| ボトルネックにおける人の渋滞軽減方法 | ○栁澤大地1,2、西成活裕1,3 | 1.東京大学大学院工学系研究科、2.(独)日本学術振興会特別研究員DC1、3.(独)科学技術振興機構さきがけ | |
| 視覚情報の遮断によるヒトの視覚運動機構の変化 | ○田村友里恵1,3、林叔克2,3、沢田康次2 | 1.東北学院大学教養学部、2.東北工業大学、3.NPO法人naturalscience | |
| エチゼンクラゲの工業材料への有効利用研究 | 勝然 勇也・三浦 拓也・諏訪 勇麻・阿部 令・佐々木 卓博・鈴木 真・遠藤 雄飛・小野 浩明・東 兼規・山田 有理・伊藤 大将・小川原 佳希・今野 優也・佐々木 祐香・門馬 裕里・山内 透也 | 宮城県石巻工業高等学校 | |
| ヒトの運動制御システムの解析 ~ヒトによる倒立振子の制御~ | ○佐瀬一弥1,3、林叔克2,3 | 1.東北大学工学部、2.東北工業大学、3.NPO法人naturalscience | |
| 領域2 | 津波と地球科学 | 今村文彦,越村俊一,後藤和久,菅原大助,萱場真太郎,高橋潤,橋本貴之,川俣秀樹 | 東北大学大学院工学研究科附属災害制御研究センター |
| 津波と地球科学―恐竜絶滅の隕石衝突と地球史上最大の津波― | ○後藤和久1、菅原大助2 | 1 . 東北大学大学院工学研究科、 2 . 東北大学大学院理学研究科 | |
| 地層に残る津波の証拠―仙台平野を襲った平安時代の津波― | ○菅原大助1 、今村文彦2 、後藤和久2 | 1.東北大学大学院工学研究科、2.東北大学大学院理学研究科 | |
| 領域3 | 逃げるカタツムリと追いかけるヘビ | ○細将貴 | 東北大学大学院生命科学研究科 |
| 小数の働きアリが示す活動のリズム | ○結城麻衣1,4、菅原研1、林叔克2,4、菊地友則3、辻和希3 | 1.東北学院大学教養学部、2.東北工業大学、3.琉球大学農学部亜熱帯動物学講座、4.NPO法人naturalscience | |
| 女王蟻によるパトロール行動のモデル化とパトロールの最適化問題 | ○八重樫和之1,5、林叔克2,5、菊地友則3、菅原研4、辻和希3 | 1.東北大学工学部、2.東北工業大学、3.琉球大学農学部亜熱帯動物学講座、4.東北学院大学教養学部、5.NPO法人naturalscience |
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